赤ちゃんが低緊張と言われたら、ご両親にできること・知っていると助けになること

■うちの赤ちゃん「低緊張」って言われたけれど・・・なんだろう?

り:はーとにお越しになるお母さま・お父さまよりいつもこのような質問を頂きます。

低緊張って単に体が柔らかいってこと?
病気であったりしませんか?
これってひょっとして発達障害?

自分のお子さんがとても柔らかかったり、なかなか首が座らなかったときに・・・お医者さんにお子さんは「低緊張」だね、と言われることがあるかもしれません。
例えばこのようなお子さんのご様子に気づくことがあるかも・・・

・なかなか首がすわらない
・一見首がすわっているようでも、何だかグラグラしている
・首が短いように見える(肩がすくんでいる)
・うつ伏せが嫌い
・うつ伏せで頭が上がらない、もしくはすぐに疲れて頭が床に落ちる。
・座らせると両足を広げて、両手を前に出して支える
・座らせると背中が丸く、腰が立たない
・うつ伏せからお腹を持ち上げることが難しい
・四つ這いの姿勢を保てない
・立ち上がりが難しい
・つかまって立つことができても、グラグラしている。
・しゃがむことが難しく、膝がピンとして動けない

今回のブログでは、この赤ちゃんの「低緊張」という特徴について、どんなものか説明します。

そして、そんな赤ちゃんのためにご両親が日々試せる触り方について紹介いたします。

■そもそも筋緊張とは何か?

数字では表せない・・・筋緊張の不思議なところです。筋肉はバネのような形をしていますね。

だから力を発揮しようとしたときに、「ちょうど良い張り具合」になっている必要があります。

この筋肉の張り具合のことを「筋緊張」(筋トーン、筋トーヌス)と呼びます。ややこしいですが、筋力とはちょっと違くて…筋肉を働かせるための土台になっています。

筋緊張の詳細はこちらのブログからもご覧下さい

普段は特に重力とちょうど釣り合うように、筋の張り具合を調節しています。重要なのは…この調節をしているのは「脳」だということです。

ご両親が赤ちゃんを触ったり抱っこしたときに、あ、うちの子固いな~とか柔らかいな~とか感じるのは、この筋緊張によるものが多いのです。

■筋肉はセンサーです。

筋肉といえば、力を発揮するところ=エンジンというイメージがしやすいかもしれません。ところが実際には、筋肉にはセンサーの働きをする部分があります。

これを「筋紡錘」(きんぼうすい)といい、1つの筋肉の中に数千個あったりします。このセンサー自体も筋肉で、しかも脳みそと双方向にコミュニケーションしています!!

実は筋肉もたくさんの感覚を感じ取っているんですね。

たくさんの感覚を経験して欲しい赤ちゃんの脳ですが、体の柔らかい≒筋緊張の低い赤ちゃんの場合には、この情報が不足することが起こります。この部分はまた後ほど続けて書きます。

■みんな人それぞれの筋緊張を持っている

この筋緊張…「高い⇔低い」という言葉で表現します。高くて健康な赤ちゃんも、低くて健康な赤ちゃんもいます。

赤ちゃんでも大人でも、一人として同じでないベースラインを持っています。なぜかと言えば・・・脳みそが違うから。それほどにひとりひとり違うことが当然のが「筋緊張」なのです。

■お母さんたちが心配する低緊張は、病気なの??

低緊張は「状態」を表す言葉で、病名ではありません。
医師は病的な筋緊張を経験と体感で理解しています。また深部腱反射・病的反射などの神経学的所見、周産期(出産前後)のできごと、血液検査、必要なら画像診断などと合わせて診断しています。

例えばダウン症という名前で有名な「21トリソミー」のお子さんの場合には、当初抱きあげることが大変なほどに柔らかい=低緊張です。そのため、歩き始めるのに2才~3才後半までと、かなりの時間を要します。

お子さんが病的に低い筋緊張かどうかは、お医者さんが判断するものです(たなかでも、なぞの整体師でもありません)

ただ、病的かそうでないかの境界は・・・

「赤ちゃんが自身のしたいことをできるようになるか」

ここにあるのではないかとたなかは考えています。

■改めて「低緊張」な赤ちゃん(大人も実は同じ)の特徴


①体が重たく感じているように見えます

(重力に抗することが大変です)

②なかなか動かない

(①とともに体からの感覚情報の不足からくる「身体への理解不足」ではないかと考えています。逆によ~く見ていることが多い印象です)

③筋肉に触れると柔らかい

(ときどき、ぷにぷになのに表面の皮膚だけがゴワっとして固いこともあります)

④筋肉をしっかり働かせることが苦手です

(注意を向けて、意識していると働きやすいのですが・・・)

⑤働かせた筋肉をそのまま維持することはもっと苦手です

(瞬間・または短い時間維持できても抜けてしまう)

⑥多くの場合、関節も一緒に柔らかい

(関節の硬さとは厳密には別物です。ときどき関節の硬さと筋緊張が一致しない人がいます)


簡単に言えば「柔らかい」わけですが、ここで2つ言えることがあります。それは・・・

●全身が同じように柔らかい訳でありません。とくに抗重力に活動することが増えてくると、体のある部分だけが固くなってくることが多いということです。0才後半のお子さんでも、しっかりと動きや姿勢を理解して体に触ると部分的に硬い所が隠れています。

●低緊張の持つ柔らかさはメリットに働くこともあります。その分体の動く範囲は広いので、自身の体の重さを、個性的でユニークな方法で支えることを学んでいくことができます。運動発達は「決まった通り」でないと異常だという、一部の先生からは批判を受けそうですが、人間の発達は決まった型にはまることはないように思います。

赤ちゃんは持って生まれたその「柔らかさ≒低緊張」も武器に変えて、動きを学んでいきます。

これらの結果として、とくに赤ちゃんの発達に関して言えば以下のような経験が必要になります。

■低緊張な赤ちゃんだって、ほとんどがちゃんと立ちます!そのために必要な経験とは?

お母さんのお腹から生まれ落ちた赤ちゃんには、その瞬間から「重力に対して自分を適応していく」という仕事が待っています。このとき筋緊張の低い赤ちゃんは、自身の体を重力に抗して支えるために、たくさんの試行錯誤が必要になります。


人間(というより物体)には少ない力や努力で、自分を支えることができる方向や動きのタイミングが存在します。

低緊張、体の柔らかいお子さんが、ある姿勢でじたばたしているときに・・・実はこれらの体の使い方を試行錯誤していることがあります。
一見して変な動きでも、ぜひ見守ってあげてください。
そういった動きへのチャレンジ、そして結果として少しでも重心の高いところで活動することが、結果として筋緊張を高める経験をする貴重なチャンスになります。

り:はーとのレッスンでは、このようなお子さんの動きのチャレンジに具体的に手助けすることがたくさんあります。(動きや赤ちゃんの意図を正確にとらえていないと逆に邪魔になるので、かなり難しいです)

■就園児、そして大人へどのような成長していくのか?

り:はーとでは新生児から就園・学齢期そして大人になってやがて歳を重ねる・・・そんなすべてのライフサイクルにいるお客さまとたくさんのレッスンを行なっています。
その視点から、「低緊張な子ども(キッズ)」「低緊張な大人」もお会いすることがままあります。

●キッズと筋緊張
緊張を高めて維持するという年齢に即したテーマにちょっと苦戦するかもしれません。例えば、かけっこでゴールまで力を込めて駆け抜けたり、縄はしごによじ登ったり、棒の上でバランスを保ったり・・・ちょっと苦手だったりしますが、一方で筋緊張を高める貴重なチャンスでもあります。

ちょっと疲れやすいのも特徴かもしれません。でも、ちょっとゴロンと寝っ転がって「休息」することを保証してあげると、ちゃんと自分で動き始めます。

ご両親にはぜひ心と体の「支え」になってあげて頂きたいと思います。その支えはお子さんのチャレンジと成功体験を生み出すカギになります。

り:はーとの子ども向けレッスンが、姿勢や運動とどのように関わるかはこちらの記事より

●大人と低緊張
ほとんどの方が「自分の体は固い」とおっしゃいますが、じつは元々低緊張の要素を持っていた元赤ちゃん≒大人の方はたくさんいます。
赤ちゃんのところで書いたように、自身を重力に対して支えて動けるようになるために、多くは肩や腰などに「代償固定」を作っています。これが慢性的な不調の種になります。

この姿勢のトラブルは、もちろん大人になってからでも関わることができます。が、赤ちゃんの時と比べると非常にたくさんの時間を必要とします。出来ることなら、赤ちゃんのころに関われればなぁと思っています。
(シェルハブ・メソッドの開発者、ハバ先生もこんな気持ちで赤ちゃんに関わることになったんだそうです)

■ご両親に毎日できることを紹介します

り:はーとでは特に「フェルデンクライス・メソッド」と「シェルハブ・メソッド」の動きやタッチを使い、遊びの中で赤ちゃんが「筋緊張を高める」経験を蓄積できるようにサポートしています。

シェルハブメソッドの創始者「ハバ・シェルハブ博士」は赤ちゃんの頭の中に「体の地図」ができていることが大切だと述べています。このメソッドの、ぽんぽん(tapping)・むぎゅ~(squeezing)といったタッチの手法も筋緊張を整え、筋肉が働く土台となる身体の認識を高めることを助けます。

以下「ぽんぽん・むぎゅ~」と書きますが、このタッチはご両親にも安全に・簡単に、少ない時間で実践できるものです。

マッサージで良いのか?という質問をよく頂くのですが・・・意図が違います。
筋肉の長さを作る、柔らかくするのがマッサージです。そして、愛着を作りたいわけでもありません。

筋の感覚を刺激する!ことは筋緊張を高めるために「脳」に働きかけるということです。

動画のように「ぽんぽん・むぎゅー」している様子を全身に行なうことができます。時間にすると数分で全身くまなくできるでしょう。

本当に変化があるの?触られている赤ちゃんに不快はないの?そう感じるご両親も必ずいらっしゃるはず・・・その感覚は当然ですし、とても大事なものです!ご両親がお子さんも守るのだから!

そんなご両親は一度ぜひスタジオにお越しになって、この「ぽんぽん・むぎゅー」をご自身で体感してみてください。というより、必ず実際に体験して頂いています。

自身が体験して学んでいるから、安心して・自信をもって赤ちゃんに実践できるのです。シェルハブ・メソッドはこの部分を非常に重要視します。(教師は膨大な時間をかけて、赤ちゃんが立って歩くまでの動きのバリエーションを自身の体で追体験します)

ここまでお読みくださったご両親はもう、もう頭では「ぽんぽん・むぎゅー」を十分に理解しているはず!あとはお子さんのために、ぜひスタジオに足をお運びください。

子ども向けレッスンの詳細はこちら

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