「抱っこしようとするとエビ反りになってしまう」「寝かせると弓なりに背中を反らせて泣く」……。 そんな赤ちゃんの姿を見て、「どこか具合が悪いのかな?」「もしかして発達に問題があるの?」と不安になったことはありませんか?
多くのママが悩むこの「反り返り」。実は、赤ちゃんが重力のある地球で生きていくために必要な、とても大切な成長のプロセスでもあるのです。
今回は、赤ちゃんの動きの専門家の視点から、なぜ赤ちゃんは反るのか、いつ落ち着くのか、そしてなぜ反ることが将来のために重要なのかについて、詳しく解説していきます。
今回の内容
なぜ赤ちゃんは背中を反らすの?それは「重力」の中で生きるための第一歩
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹の中にいた時のように丸まっている(屈曲姿勢)のが基本です。しかし、オギャーと生まれて外の世界に出た瞬間から、赤ちゃんは「重力」という巨大な力と向き合うことになります。
お腹の中と違う経験の始まり
お腹の中にいるうちは多くの赤ちゃんは全身を丸めています。それが、お腹から出て仰向けに寝ると2か月ぐらいまでの間に、四肢を床の上に自然に下せるようになります。(TLRという原始反射の影響でもあります)
0カ月
2カ月
でも、お腹のいたころの経験から、全身を丸められると穏やかになる赤ちゃんが多いんですよね!
丸めて抱っこしてあげることの価値も高い時期だと思います。
一方うつ伏せでは頭を持ち上げる≒伸筋を使う活動が少しずつ高まり始めます。(すでに胎内にいるときの姿勢で、伸筋が強くなりやすい子や低出生体重の子のように、生まれた直後からすでに反り気味の子もいます)
視線・頭の動きと連動する背中の動き
また、赤ちゃんは「見たい!」という好奇心で動きます。興味のあるものがつむじの先の上の方にあると、赤ちゃんは顎を上げてそれを見ようとします。この時、視線が上がると同時に、背中の筋肉も連動してスイッチが入り、結果として体が反ってしまうことがあります。これは、目と首、そして背骨が連動して動いている証拠であり、成長の証でもあるのですが・・・
なので、見る活動と頭の動きを促す遊びの際に、反りをコントロールするコツも実はあります。
自己感の強さと反り
実際にたくさんの赤ちゃんを見ていると、反りの強い赤ちゃんには「気持ちの高まり」が強いお子さんがいます。
これには、何かの不快を感じている子と、生気情動のように気持ち(情動)の高まりが強い子がいると思います。
気持ちの方は「自己感の成長」と関連づくので、この成長が早い子に見られる印象を持っています。
反ることが「必要な時期」:飛行機のポーズと反射の関係
赤ちゃんが背中を反らす動きは、専門的には**伸展(しんてん)**という動きに関係しています。重力に負けずに頭を持ち上げたり、体を支えたりするためには、背中側の筋肉を使って体を「伸ばす」力が必要になります。
つまり、赤ちゃんが反り返っている時、それはただ不機嫌なだけではなく、「重力に対して自分の体をどう支えるか」を脳と体が一生懸命学習している最中なのです。特に
「反り」が特に目立つ時期と、その背景にある「反射」について知っておくと、ママの気持ちも少し楽になります。
ランドウ反射と飛行機のポーズ
生後6ヶ月頃になると、うつ伏せで手足を床から離して浮かせる「飛行機のポーズ」をとる赤ちゃんが増えます。これは**ランドウ反射(反応)**と呼ばれるもので、頭を上げると連動して背中全体が反り、足も上がるという反応です。
この時期の「反り」は、背中の筋肉(伸筋)をしっかりと働かせて、体を重力に対して持ち上げるための重要なトレーニング期間です。この強い「反り」の経験があるからこそ、将来しっかりと背筋を伸ばして立つことができるようになります。
不安や驚きで反ることも
一方で、まだ月齢が低い時期の反り返りは、モロー反射などの驚きや不安に関連する反射の影響で出ることもあります。バランスを崩した時や大きな音がした時に、パッと手足を開いて背中が反ってしまう動きです。これは、赤ちゃんが自分の身を守ろうとする本能的な反応の一部でもあります。
反り返りが「コントロールされる時期」:お腹の力がカギ
では、この激しい反り返りはいつまで続くのでしょうか? 実は、「反るのをやめさせる」のではなく、「体の前側の筋肉(お腹の力)」が育つことで、前後のバランスが取れるようになるというのが正解です。
背中とお腹のバランス調整
3~6か月ごろから始まり、ハイハイの準備が始まる頃にかけて、赤ちゃんはお腹の筋肉を使って下半身を持ち上げたり、股関節を曲げたりするようになります。 今まで「反る(伸ばす)」ことばかり優位だった体に、「丸める(曲げる)」力がついてくることで、反りすぎないようにブレーキをかけられるようになるのです。これを抑制機能や統合と呼びます。
4点支持(四つん這い)への移行
ハイハイの前段階として、お腹を床から持ち上げて「四つん這い」の姿勢をとるようになります。この時、背中側と・お腹側の筋肉をバランスよく働かせることが求められます。 この時期になると、今までのように無意識にガーンと反ってしまうことは減り、必要な時だけ反る、あるいは自分で姿勢を戻すといったコントロールができるようになっていきます。
最終的に「反る」ことが大事な理由:一生モノの「S字カーブ」へ
最後に、なぜこの「反る」経験がそこまで重要なのか、その最終的な理由をお伝えします。
背骨のS字カーブの基礎を作る
大人の背骨は、横から見ると綺麗なS字カーブを描いています。しかし、赤ちゃんの背骨にはまだこのカーブがありません。お座りがばっちりできるようになった1歳頃の背中は、実はほぼ真っ直ぐ(フラット)なんです。
赤ちゃん時代にしっかりと体を「反らせる」経験をし、その後にお腹の力でバランスを取る経験を重ねることで、重力に対して垂直に体を保つ準備が整います。そして、立ち上がり、歩き、成長していく中で、10代後半まで長い時間をかけて、私たち大人と同じような衝撃を吸収できるしなやかなS字カーブが完成していくのです。
「反る」は悪者じゃない
ネットで検索すると「反り返りは良くない」という情報が出てきて不安になるかもしれません。しかし、これまで見てきたように、反ることは重力に抗って立ち上がるためのエネルギーであり、発達に必要な通過点です。
「反っちゃダメ」ではなく、「今、背中の筋肉を鍛えてるんだな」「次は前側の筋肉とのバランスをとる練習だな」と、温かい目で見守ってあげてください。
伸びなくて困っている子どもが増えています
逆に、就園児の時期に全身をしっかり伸ばして支えることのできないお子さんが増えていることも問題になっています。これは歯並びや口腔機能に関わる大事な部分です。だから、お子さんをずっと丸め続けることも避けて欲しいのです。
ママができるサポート:無理に直さず「動き」を引き出す
「反り返りが強いと心配…」というママへ。無理に体を押さえつけたり、真っ直ぐにしようとしたりする必要はありません。赤ちゃんにとって心地よいサポート方法があります。
横向きの姿勢を活用する
反り返りが強くて抱っこしにくい時や、寝かせると泣いてしまう時は、「横向き」の姿勢を試してみてください。
仰向けだと重力で背中側にスイッチが入りやすいですが、横向きに寝かせて背中を丸くサポートしてあげることで、緊張が解けやすくなります。
おもちゃの位置を工夫する
赤ちゃんの胸の高さ、あるいは少し下の方におもちゃを見せてあげてください。視線が下がることで顎が引け、首の後ろが伸びるため、過度な反りを防ぎながら「丸まる」動きを引き出すことができます。
無理な「お座り練習」は避ける
腰が据わっていない時期に無理に座らせようとすると、バランスを取るために余計に体を固めて反らしてしまうことがあります。床でのうつ伏せ遊びやズリバイを十分に経験させてあげることこそが、自然な背中のコントロール力を育てる近道です。
なかなか反りの問題が解決しないときには
ここまで、ご両親に簡単に実践できるサポートを紹介しましたが、うまくいかない・もっと知りたいとお考えの時には、ぜひスタジオでのレッスンをご検討くださいね!




